自分が実際にやられたら、一日で、俺とおなじ状態になるやつが「受け方をかえればいい」「気にしなければいい」と言うわけよ。俺は、騒音耐性があるほうだし、生活体力だって、あるほうなんだよ。「受け方をかえればいい」「気にしなければいい」と言ったやつのなかには、俺が九〇日でむかえる変化を、三〇日でむかえてしまうやつだっているかもしれない。ところが、「自分は平気だ」「自分は影響をうけない」という前提で「受け方をかえればいい」「気にしなければいい」と言う。ほんとうは、その人がきらいな音を、あの音のでかさで、あの時間の長さで、聞かされたら、影響をうけるのに、「過去は関係がない」「鳴り終わったら関係がない」と言う。実際には、やられてないから、言えることなんだよ。けど、うぬぼれ屋だから、損なのはわからない。認めない。実際にやられてしまうと、うぬぼれ屋に、くそを言われるようになる。実際にやられてしまうと、そのぶん弱っているわけだから、うぬぼれ屋が「自分のほうがうえだ」と思って、見くだしたことを言ってくることになる。
実際にやられてないわけだから、やられてない体力を維持できる。実際にやられてないわけだから、普通に眠ることだってできる。自分が実際に、俺とおなじようなことをされて、眠れない状態を経験してないわけだから「自分だったら影響をうけない」「鳴り終わったら、関係がない」「鳴り終わったら、眠れる」と思うわけ。そして、実際にやられなければ、俺が説明したって、その考えはかわらない。ずっと、やらないから、ずっとその考えを維持できる。
きちがい兄貴が、よその人がよその家ではやらない「迷惑行為」をした時点で、俺が、他のやつから見くだされることが決まっているんだよ。そりゃ、そうだろ。あんな至近距離で、あんなくそでかい音を、聞かされ続けていいわけがない。それも、他の人はどうだか知らないけど、ヘビメタの音は、ぼくにとって強烈に、苦手な音なのである。ヘビメタを、普通の音……たとえば、人が会話するぐらいの音で鳴らしているのであれば、「苦手なのが悪い」という意見もわからないではないけど、鳴らしている本人の耳が悪くなるようなでかい音で鳴らしているんだよ。「自分は平気だ」「自分は影響をうけない」という前提で、ものをいったやつの家族は、鳴らしている本人の耳が悪くなるようなでかい音で、なにかを鳴らしていない。ぜんぜんちがう。実際にそういう家族がいないから、やられてない。やられてないから、夜郎自大な状態で「自分は平気だ」「自分は影響をうけない」と言っているだけなんだよ。