きちがい兄貴は、ほんとうに、つもりがなかったんだな。あんなに、きちがい的な意地で、いつもいつもやって、絶対にゆずってくれなかったのに、つもりがない? 一五年間やりきったあとに、「すまん」とひとこと言えば、それですむのか?
俺の人生はなんだったんだ?
どいつもこいつも、俺が普通の騒音にさらされたのだと思うのだ。ちがうね。うちは、幼稚園のとなりだから、ずっと、普通の騒音よりでかい騒音にさらされている。けど、きちがい兄貴が、ヘビメタを鳴らすまでは、普通の人とおなじぐらいしか、騒音でこまったことがなかったのである。限度を超えている。きちがい兄貴のヘビメタは、いつもいつも、限度を超えている。どれだけ、俺が「きちがい兄貴のヘビメタは、いつもいつも、限度を超えている」と言ったって、ほかのやつらは、まるでまるで、理解しない。こいつらもこいつらで、兄貴とおなじように、理解しないということも理解しないという状態で、理解しない。
普通の気分で暮らしていて、「うるさいときがある」ということではないんだよ。どんだけ、切羽詰まった、めちゃくちゃな気分か、ぜんぜんわかってないなぁ。