俺にえらそうなことを言ったやつがいるんだけど、そいつが、なんかの病気になって働けなくなったら、そいつの病室に行って、言ってやりたいことがある。
それは、「人間は働くべきだ」ということだ。そいつが「できない」と言ったって、ぼくは、「できない」ということを認めてやらない。
そんなのは、ガン無視だ。
「過去は関係がない」と言ってやる。
「過去は現在に影響をあたえない」「すべては、受け止め方の問題だ」「できると言えばできる」「できないというからできないんだ」と言ってやる。そいつが、「○○病になって、働けなくなったと言っているだろ」と言ったら、俺だって「病気をしたことがある」と言ってやる。
そいつが「できないと言っているだろ」と言ったら、「それでも働くべきだ」と言ってやる。俺のすばらしい助言で、相手に(働く)勇気をあたえることができたと満足して、病室をさる。すべて、自己満足。「過去は関係がない」「それでも働くべきだ」……これは、働けない人に対する攻撃的な文言だよね。
絶対に、相手が働けないということは認めない。絶対に、相手が働けなくなった理由は認めない。「これこれでできない」と言われたら、「俺だって、苦労した」「俺だって、くるしい」「俺だって困難を経験した」と言えばいい。
それで、均質化、同質化終了。
おなじ状態だ……おなじ条件を経験したということになってしまう。まあ、言ってるやつの頭のなかで、そうなるだけなんだけどね。
これは、「無視力」として、けっこう威力があるぞ。無理解ぶりを発揮した表現だからな。そういう言葉で、均質化したって、経験したことがちがうのだから、均質化できない。
そういう言葉で同質化したって、質がちがう経験をしたのだから、同質化できない。
けど、均質化できないということや、同質化できないということは、絶対に認めない。
実際、本人の頭のなかでは、それで、均質化、同質化したことになっているので、それですんじゃっている。
質のちがい、量のちがいなんて、認めない。
影響がものすごく残る過去の出来事なのか、影響がほとんどまったく残らない過去の出来事なのかなんてことは、気にしない。
「人間は働くべきだ」「俺だって苦労した」「それでも働くべきだ」と三つの言葉を言ってしまえば、それで、勝ったことになる。「いい助言をしたやった」ことになる。
本人は、満足だ。
* * *
あっ、そうだ。「まるまるさんは、働くということの意味がわかってない」とか「まるまるさんは、働くということの重要性がわかってないから、駄々をこねて、働こうとしないんだ」と言っているんだと、言ってやろう。相手……まるまるさんが「できないからできない」と言っていることは、ガン無視だ。あまえた性格だから「できるのにできないと言っている」とゲスのカングリをして、働くということの意味がわかってないから「できるのにできないと言っている」とゲスのカングリをして、駄々をこねるような幼稚な性格だから「できるのにできないと言っている」とゲスのカングリをする。正しいと思っている。自分の言ったことが正しいと思っている……。