たとえば、属性というのは、現在の属性だけど、その属性の値は、過去の影響をうけたものになる。だから、過去を無視すれば、現在の属性が消えるのかというと消えない。
けど、詐欺的な説明のなかで、あたかも、本人が、過去を無視すれば、属性を無視することが可能だということを言ったりする。
詐欺なんだよ。
たとえば、本人が、六五歳なら、属性は、六五歳だ。六五年間生きてきたという過去の事実があるから、今現在の属性が、六五歳になる。六五歳の人が、婚活をするとする。その場合、六五歳というのは、『条件』になる。ひとつの条件だ。
それは、本人が無視しても、他人は無視しない。
たとえば、婚活パーティーに出たいとする。けど、婚活パーティーには、年齢制限がある場合が多い。その場合、年齢で落とされる。本人が、自分の年齢という属性を無視しようとしても、他人がその人の年齢という属性を重視しているのなら、本人が、どれだけ、年齢という属性を無視しようと思っても、現実的には、年齢という属性を無視することができないということになる。
そういうことについて、本人が、どれだけ、過去の積み重ねである現在の属性を無視しようとしても、他人が無視しないのだから、条件として成り立ってしまう。
ようするに、本人の属性を気にしているのは、本人だけではない。他人や他人の集合も、本人の属性を気にしている。
なので、何回も言うけど、過去の積み重ねによってしょうじた現在の属性が、条件になる。本人が条件を無視しても、無効化されない。
けど、説得をしたい人は「過去なんて関係がない」「条件なんて関係がない」と言って、説得をしようとする。
とりあえず、説得をする人を、説得者と呼んでおくことにする。
説得者だって、過去を重視して、過去の出来事を考えて、現在のことを判断しているのである。普段の生活においては、説得者だって「過去は関係がある」「条件は関係がある」と思って、生活しているのである。
けど、説得をしようと思うと「過去は関係がない」「条件なんて関係がない」と言い出す。これ、説得者本人が意識してないだけで、相当に矛盾がある行為なのである。一貫性はない。
六五歳の婚活パーティーの話だと、説得者がどうして、説得しようと思っているのかわからないと思う。
たとえば、三四歳の男性ニートがいたとする。その男性ニートを労働市場に送り込みたいと思っている人がいたとする。その労働市場に送り込みたいと思っている人のことを、説得者と呼ぶことにする。
説得者は、なんとかして、その三四歳の男性ニートに仕事をさせたいと思っている。そいういう、意図がある場合は、「過去は関係がない」「条件なんて関係がない」と説得したくなるのである。
けど、この場合も、説得者のほうは、その人(そのニートの人)が、男性であり、三四才であるということを認識して、そういうふうに言っているわけだから、もちろん……説得者も……本当は……過去を重視している。
男性という属性は、受精するときに決まったのである。過去の出来事が現在に影響をあたえている。
三四歳であるということは、三四年前に生まれて、三四年間生きてきたという過去の出来事が影響をあたえている。
「過去は関係がある」し「条件は関係がある」のである。説得者だけが、説得したい場面で、「過去は関係がない」「条件なんて関係がない」と言っているだけなのである。説得のためのトリックが成り立っている。まちがった前提に立って、まちがったことを言っている。
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「可能性がある」ということと、「条件は関係がない」ということは、ちがうことなのに、こういうことも、ごっちゃにして言っているんだよね。これ、相当に妄想的なまちがった発言なのだけど、説得者は、気にしてない。
たとえば、全女性のなかで、六五歳の男性と結婚したいと思っている人が一〇%いたとする。
その場合、九〇%の女性は、その男性が六五歳の男性であるということを重視して、その男性と結婚をするということについては、まったく考えないということになる。
一〇%女性も、その男性が六五歳の男性であるということを重視して、とりあえず、結婚する可能性があると思ったとしよう。
その場合、六五歳の男性でも、結婚できる可能性はあるということになる。
けど、これは、『条件は関係がない』ということではない。年齢という条件が、影響をあたえている。年齢という条件は、結婚できるかどうかということに影響をあたえている。可能はあるけど、条件が影響をあたえてないということではない。
属性が条件になり、条件が影響をあたえている。
属性の値は、その男性が六五年前に生まれたという過去の出来事によって決まっている。また、属性の値は、その男性が六五年間、死なずに生きてきたという過去の出来事によって決まっている。他人……この場合は、女性が、その属性の値をどのように評価するかということが、男性の結婚についての条件になる。
その男性が、『自分は六五歳だけど、そんなのは、関係がない』と思っていても、評価をする女性のほうが、年齢を重視するのであれば、その男性は、全女性の考え方を書き換えることができないのだから、女性の評価は、男性が結婚できるかどうかということに影響をあたえる。
結婚できる可能性はあるけど、結婚できる確率は低い。
可能であるということは、「過去は関係がない」ということを意味していない。可能であるということは、「条件は関係がない」ということを意味していない。
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属性と書いてきたけど、本当は、属性の値と書くべきところがある。けど、そういうふうに書くと、ややこしくなるので、属性と書いておいた。たとえば、年齢という属性の値が、六五歳なのである。性別という属性の値が、男性であったり、女性であったりするわけだ。だから、属性の値と書いたほうが正確なのだけど、じゃあ、それは、属性ではないのかというと、属性だと考えることができるのだ。女性という属性、男性という属性、六五歳という属性……。そういう言い方でもいい。