ほんとーーに、全部つまらないなぁ。この時間、きちがいヘビメタがずっと鳴っていた。この時間、鳴っていた。まあ、この時間帯という意味だけど……。ほんとうに、きちがいヘビメタで、くそ野郎に、なめられっぱなしだよ。
この人生になんの意味がある。
ほんとうに、ヘビメタ騒音の影響をうける。どれだけ「うけないうけない」と念仏のように唱えても、うけるものはうける。きちがい的な兄貴が、きちがい的なことを思いついたために、こうなってしまった。
これ、きちがい兄貴が、きちがい的な頭の構造をもっていたとしても、ヘビメタの音を大音響で鳴らそうと思わなければ、こうならなかったことなんだよ。たとえば、囲碁に夢中になったら、こうならなかった。
きちがい兄貴が、でかい音で鳴らすことにこだわってこだわって、ほかのことは、すべて無視して、鳴らしたからこうなった。
きちがいヘビメタ騒音生活が、はじまった。ぼくのほうで、ヘビメタ騒音生活が始まった。
「すべてを無視して」と書いたけど、本当に、自分にとって都合が悪いことはすべて無視したのだ。耳が正常なら絶対にわかる、おと手のでかさを最後の最後まで、無視した。しかも、本人は、きちがい親父とおなじように、無視したつもりがまったくないのである。
自分は、フォークギターぐらいの音でやっているつもりなのだ。そんなことはないよ。
ヘビメタが好きな兄貴の友達が「こんな音で鳴らしてだいじょうぶなの」「家族の人、かわいそうだよ」と言うような音で鳴らしてたって、なんとも思わないのだ。
きちがい親父が入院しているとき、兄貴の嫁さんに、いろいろと話した。それで、兄貴の嫁さんが、兄貴にいろいろ説明した。そうしたら、兄貴は「そんなつもりじゃなかった」「そんなのぜんぜん気がつかなかった」「あいつ(弟)がそんなにこまっているなんて、ぜんぜん気がつかなかった」と言ったのである。あのきちがい的な意地で、どれだけ言っても、鳴らしたくせに……。しらばっくれて。
兄貴の嫁さんが「それが、おかしい」と言ったら、黙りこくったみたいだけど、本当に、きちがい兄貴は、鳴らしている一五年間、気にしなかったのだ。こっちが、あれだけ「こまるからやめてくれ」「試験だからやめてくれ」「夜、眠れなくなって、遅刻をしてしまうからやめてくれ」「宿題をするからやめてくれ」と言っているのに、一秒もしずかにしてくれなかった。全部、自分がやりたい音でやりきった。これが事実だ。
これは、ほかの人には想像できないぐらいの影響をあたえる。
「そんなのは、お兄さんに言えばいい」と言ったやつが考えている影響なんて、ゼロだよ。ここでも、ゼロと無限大なんだよ。ぜんぜん、ちがう。けど、そいつの人生のなかでそういうことが発生しなかったのなら、そいつにとっては、ゼロなんだよ。
エイリさんが言っているだけのことなんだよ。どれだけのひらきがあるか? どれだけのひらきがあるか。
実際に人生のなかで、きちがい家族が、きちがい家族の感覚で、よそでは絶対にやらないことを、毎日、夢中になってやってしまう。それが、囲碁ならいい。けど、こだわったことが、こだわりのでかい音でヘビメタを鳴らすことなのだ。
すぐそこに、でかいでかいスピーカーがあって、がんがん鳴って、小さな振動もくる。あんな音で鳴らしている「うち」なんて、「うち」以外になかった。