言霊について、付け足して書いておく。
「足を骨折する」と言うと、言ったことが現実化するので、ほかになんの理由がなくても、突然、足を骨折して、痛みを感じるのである。……言霊主義者が前提にしている世界というのは、そういう世界だ。
けど、実際には、なにも理由がないのに、「足を骨折する」と言ったら、実際に足を骨折するかというと、そうではない。
ほかに理由がなければ、言霊主義者が、どれだけ「足を骨折する」と言っても、骨折しない。どれだけ熱心に、「足を骨折する」と言っても、ほかに理由がなければ、言っただけでは、足を骨折することは不可能だ。足の骨は、言っただけでは、おれない。
言ったことが、言霊主義者の身の上に起こるかと言うと、起こらないのだ。
ちゃんと、階段から落ちて、足の骨をおったというような、現実的な理由があるから、足の骨がおれるのだ。
それから、階段から落ちるまえに、「足の骨がおれる」と言ったわけではないのだ。
言わなかったことが、現実化した。
「言ったことが現実化する場合もあるし、言わなかったことが現実化する場合もある」と言うのであれば、言霊主義者の主張は、いったいなんなのかということになる。
(言霊主義者の発言)言ったことが現実化する。
(言霊主義者の発言)どれだけ「生き返る」と言ったって、死んだ人は生き返らない。
言霊主義者は「言ったことが現実化しない場合もある」ということを認めている。
(言霊主義者の発言)できると言えばできる。
(言霊主義者の発言)「瞬間移動できる」と言ったって、瞬間移動なんてできるわけがないだろ。
言霊主義者は「言ったことが現実化しない場合もある」というとを認めている。
それから、「階段から落ちて足を骨折する」と、階段から落ちるまえに、言わなかったのに、階段から落ちて足を骨折したとする。これはとりもなおさず、言わなかったことが、現実化したということだ。
言ったことが現実化する場合もあるし、言わなかったことが現実化する場合もある。
言わなかったことが現実化するのであれば、言ったことが現実化するという言霊理論はどうなってしまうのだ?
言ったことが現実化する場合もあるし、言ったことが現実化しない場合もある。言わなかったことが現実化する場合もあるし、言わなかったことが現実化しない場合もある……。これじゃあ、「言ったことが現実化する」と言う意味がないのだ。自己矛盾している。
何度も言うけど、言ったことは、言わなかったことを含んでない。言ったことであれば、それは、言ったことであって、言わなかったことではない。現実化するのであれば、現実化するのであって、現実化しないということはない。