たとえば、水俣病でくるしんでいる人が、問題である物質を海に流した企業に対して、「責任をとれ」と言ったとする。
そうなると、自己責任論者が、水俣病でくるしんでいる人の自己責任だと言ってくるのである。自己責任論者が、水俣病でくるしんでいる人は、「人のせいにしている」と言ってくるのである。
口癖論者が「つらいつらいと言っているから、つらくなる」と言ってくるのである。
引き寄せ論者が「水俣病でくるしんでいる人は、水俣病を引き寄せちゃったからダメなんだ」と言ってくるのである。
そういうことを、「現在くるしんでいる人」に対して言って、なにも感じないということになる。
いや、「自分が言っていることは正しい」「自分が言っていることは真実だ」と感じているかもしれないけど、相手がどう思うかについてはなにも感じてないということになる。
* * *
ああ、そうだ。「暗いことを考えると暗いことが起こり、明るいことを考えると明るいことが起こる」と思い込んでいるやつが、「不満不平禁止」と水俣病でくるしんでいる人に言うのだ。
たしかに、水俣病でくるしんでいる人は、不平不満を「言いやすい状態」になっている。
実際にくるしいし、他人(他の団体)が、やったことが原因で、くるしんでいるのだから、他人(他の団体)に不満不平を言うだろう。
これを、とめようとするやつらが出てくる。
こんなのない。
しかも、すでに暗いことが起きたのである。水俣病でくるしんでいる人の身の上には、すでに暗いことが起きたのである。
明るい気持ちで、毎日、働いていた漁師が、水俣病になってくるしんでいた。これが事実。これが現実だ。
明るい気持ちで働いていたのに、暗いことが起こった。
暗いことを考えたから、暗いことが起こった……のではないのである。もうすでに、否定されていること。その否定されていることを、正しいと思い込んでいるやつが、妄想的なことを言う。
こんなの、妄想。
妄想は、自分の頭のなかにとじこめておけばいい。妄想的な前提に立って、現実を語るな。
他人の「自由に発言する権利」をうばおうとするな。