条件を無視して、一括して、「不満不平、禁止」ということにしたら、条件が悪い人が苦しむことになるのである。たとえば、一五年間、不当なサービス残業をしている「名前だけ店長」が、「サービス残業なんておかしい」と言ったら、それは、サービス残業に関する「不平」を言ったということになってしまうのである。「サービス残業で、睡眠時間が短くなってくるしい」と言ったら、それは、「不満」を言ったことになってしまうのである。サービス残業をきちがい的な理論でおしつけるやつが悪いわけで、名前だけ店長が悪いわけではない。まあ、正論にこだわれば、サービス残業をうけいれてしまった名前だけ店長もわるいということになるかもしれないけど、そういうことは、今回は問題にしない。問題なのは、だれかにとって「不平不満だ」と思えることを言ってしまってはいけないという雰囲気だ。条件がいい人が、「不平不満禁止」と言うと、条件が悪い人が「不平不満を言うべきところ」で、言えなくなってしまうのである。なので、こういうのは、不幸をつくりだしている。なので、やめるべきだ。
不平不満を言うと、世界が暗くなるのではなくて、すでに、世界が暗いから、だれかが不満不平を言わなければならない状態になるのである。条件の差で、いわれのない悪条件をおしつけられている人は、口をふさがれ、くるしんで死んでいく。
AさんとBさんがいたとする。Aさんが「サービス残業で、睡眠時間が短くなってくるしい」と言ったとする。Bさんが、「不平不満は言うものじゃない。不平不満を言うと、世の中が暗くなる」と言ったとする。この場合、Aさんの発言を「不平不満だ」と思ったのは、Bさんなのである。Bさんが、Aさんの口を封じるために「不平不満は言うものじゃない」と言ったのではないとしよう。しかし、Aさんは、言いにくい状態になっている。Bさんの発言によって、Aさんは、Bさんが不平不満だと判断してしまうようなことを、言いにくい状態になってしまう。Bさんは、Aさんの口を封じ、Aさんをくるしめている。どうしてなら、Aさんにとってくるしい状態が、ずっと続くことになってしまうからだ。Aさんの世界は、すでに、くるしく、暗いものなのである。不平不満を言わないと、改善されないものなのである。
Cさんがいたとする。Cさんが、Bさんのいる部屋につかつかと入っていって、いきなり、Bさんの襟を両手でつかみ、左手で襟をつかんだまま、右手を襟からはなし、右手でBさんの顔を一〇発なぐったとす。Bさんは「いたい」「やめろ」と言ったとする。そのとき、Cさんが「不平不満禁止!!」と言ったとする。Bさんは「その通りだ」と思うだろうか?
まあ、Cさんのような人がいるかどうかは別にして、Bさんがやっていることは、だれか、Cさんのような人にやられている人の口をふさぐような行為なのである。いい行為じゃない。「差」があると言っているだろ。Cさんよりも、きちがい的な親がいる。そういう親のもとに生まれた子供側の人は、不利な立場の人なのである。そういう不利な立場の人が、「こういうことはよくない」と言った場合、Bさんのような人が「不平不満禁止」と言う可能性がある。確率は高い。というよりも、Bさんは、「全体」に対してそういう行為をしている。全体のなかには、立場が悪い人や条件の格差で「下の下の人」が含まれている。Bさんは、「不平不満を言うと世界が暗くなる」と言っているけど、立場が悪い人や条件の格差で「下の下の人」にとっては、生まれたときからすでに「世界は暗い」のである。まず、不平不満を言って、事柄を明らかにしなければ、世界が明るくならない。
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精神世界の人は、あんまり考えないけど「不平不満」というのは、一意に決まるものではない。ようするに、なんらかのことを言われた人、あるいは、なんらかのことを聞いた人が「それは、不平不満だ」と判断しただけなのだ。たとえば、Cさんは、Bさんが「いたい」「やめろ」と言ったので、それを、Bさんが不平不満を言ったと判断したのである。これは、Cさんがそう判断したということだ。ほかの人は、別の受け取り方をするかもしれないのである。