ほんとう、ヘビメタ騒音があるとすべてがいやなことになる。こんなことをどれだけ、ほかの人に言ったって、ほかの人は、ヘビメタ騒音がないわけだから、ぼくが言った意味では、伝わらない。その人が今まで経験してきたことをもとに、「ヘビメタ騒音」のことを想像して、ものを言ってくる。その言い分は、ヘビメタ騒音を経験したぼくにとっては、「いやなこと」なのである。いやなことが、つみかさなっていく。きちがいヘビメタ騒音があると……毎日毎日続くと……いやな出来事がつみかさなっていく。ほかの人との間の、いやな出来事がつみかさなっていく。ヘビメタ騒音というのは、そういう騒音だ。きちがい家族による騒音というのは、そういう騒音だ。きちがいじゃなければ、あれがでかい音だとわかるから、最初から鳴らさない。最初から、どんだけ性格がわるいやつでも、あんな音で鳴らさない。そして、でかい音で鳴らしているあいだじゅう、でかい音で鳴らしているということを、無視しやがるのである。これが、どんだけ性格がわるいやつでも、きちがいでなければ、できないことだ。感覚器を無意識のレベルで書き換えるということができなければ、できないことだ。で、そういうモードできちがい兄貴はずっと暮らしている。普段の「それ」が、きちがいヘビメタを鳴らしている「それ」なのだ。こんなのは、ない。そうやって、生活をうばわれたことがない人には、それが、どういうことなのかわからない。「やってないつもりのまま」「ずっとやっている」……。……こんな異常なことが、普通に成り立っている。二四時間中、二四じかんずっと、こんな異常なことが、普通に成り立っている。こんなきちがい的な家に住んでいて、いいわけがない。そりゃ、きちがい兄貴が、将棋にこって、ずっと将棋をやっているけど、パチンパチンという音以外は出ないというのであれば問題はないけど、きちがい兄貴がこったことは、ヘビメタを大音響で鳴らすことと、エレキギターを大音響で鳴らすことなのだ。これ、本当にでかい音で鳴らしているのに、わかってない。ずっと、やられる。生活しているあいだじゅう、ずっとやられる。そうなると、たとえば、深夜の時間帯は、鳴ってないのだけど、からだがくるしいのである。そして、眠れないのである。早朝になって眠れるけど、どのみち、朝、起こされる。ヘビメタが鳴ってなかった時期だって、朝がつらいというのはあった。けど、ヘビメタ期間中のそれは、質的に、あきらかに異なるのである。ぜんぜんちがう。これだって、実際にきちがいヘビメタ騒音を、日常的に、何千日も、経験した人じゃないとわからないことだ。質的にちがうということがわからない。ぜんぜんちがうということがわからない。だから、わからないまま、あてずっぽうで、好き勝手なことを言ってくるということになる。「俺だって、朝はつらい」「けど、がんばっている」……。ぜんぜんちがうんだよ。
きちがい兄貴がやったこと……やっていること……何千日も続けてやっていることで、俺が、ほかの人から、悪く言われる。俺とほかの人のなかが悪くなる。
きちがいヘビメタが一〇〇一日積もったときの、朝のしんどさといったらない。きちがいヘビメタが五〇〇一日積もったときの、 朝のしんどさといったらない。みんなわかってない。みんな、普通の「朝のしんどさ」だと思っている。ぜんぜん、ちがう。憂鬱になる。どれだけがんばって、起きて、学校に行っても、アルバイトに行っても、めちゃくちゃにしんどい状態でからだを動かすことになる。ぜんぜん、ちがう。しんどさの、しんどさがちがう。けど、それは、きちがいヘビメタ騒音がなかった人にはわからない。わかるわけがない。「過去は関係がない」と言っている人のしんどさなんて、まったく問題じゃない。そういうことが言えるのだから、まったくしんどくない。きちがいヘビメタとは、異質のしんどさだ。軽くて異質だ。一日のなかであれだけ長いヘビメタ騒音が、毎日つみかさなるということの、意味が、(そういうことを言う人は)まったくわかってない。
「過去なんて関係がない」と人に言える状態だということが、「わかってない」ということを、明示している。「過去なんて関係がない」と人に言えるのだから、「わかってない」。わかっているわけがない。けど、「わかっている」と、こういう人たちは、みんな、言うんだよね。けど、自殺する前の名前だけ店長が、人に対して「過去なんて関係がない」と言うと思う。そんなことを言う元気があったら、自殺してないよ。「過去なんて関係がない」と思っていたら、自殺なんてするわけがないだろ。過去の出来事がつみかさなって、死にたいと思っているわけだからさ。そういうことがまったくわかってないということが、「その状態」についてわかってないということを物語っている。質的にちがうんだよ。どれだけ「俺だってつらいことがあった」「いろいろないやなことを経験してきた」と言ったって、そんなのは、人に対して「過去なんて関係がない」と軽く言えるようなつらさなんだよ。