精神、つまって、ちょちょぎれているのに、鳴らし続けやがって……。でっかい音で鳴らし続けやがって……。きちがい兄貴の音は、異常だ。きちがい兄貴の音で、こまっているんだぞ。きちがい兄貴の音で、追いつめられているんだぞ。切羽詰まっているんだぞ。しずかにしろ!!! しずかにしろ!!
きちがい兄貴の部屋に行って、何回も絶叫しても、きちがい兄貴が鳴らし続けるんだよ。殺してやりたかった。殺せなかった。鳴らされ続けた。
それで、なにもしてないつもりなんだよ。きちがい兄貴はなにもしてないつもりなんだよ。なにもしてないつもりで、入試の前日、日曜日、十三時間、ヘビメタをでかい音で鳴らす。よそじゃ鳴らせない音で鳴らす。しかも、一分もゆずってないのに、「ゆずってやった」と思っている。きちがい。きちがい。自分が、弟の入試の邪魔をしてないと思っている。どれだけ言っても、通じない。こまるということが通じない。入試の前日に、そういう音でヘビメタ騒音が鳴っているとこまるんだということが、通じない。入試の邪魔をして、おとうとの人生を破壊してやろうと思っているわけではないんだよ。ただ単に、自分が思ったとおりの音で、ヘビメタを鳴らしたいだけだ。自分が鳴らしたい時間、ずっと鳴らしていたいだけだ。けど、それだとこまるのだ。入試前日の日曜日でさえ、これだよ。普段の日に静かにしてくれるわけがないだろ。