たとえばの話だけど、言霊主義者にしたって「一秒後に、一億円が、あらわれる」というようなことは、言わないでしょ。
どこから、あらわれるのか?
まあ、机の上から、あらわれるということにしておこう。「あらわれる」ではなくて「でてくる」でもいいなぁ。「一秒後に、一億円が、机の上から、でてくる」……。札束が次から次へと、机の表面からでてくるのだ……。
なんで、言ったことが現実化しないか?
物理的にありえないことだから、現実化しない。
けど、普段は、「言ったことが現実化する」と言っているのだ。「言ったこと」というのは「言わなかったこと」ではないので、一〇〇%の言ったことだということになる。
「現実化する」ということは、「現実化しない」ということを含んでないので、一〇〇%現実化するということになる。「現実化するときもあるし」「現実化しないときもある」……こういうことは言ってない。「現実化するのである」。
これは、まえにも書いたけど、「言ったことが現実化する」という言葉は「一〇〇%の言ったことが現実化する」という言葉と等価なのだ。
そして、「言ったことが現実化する」という言葉は「言ったことが一〇〇%の確率で現実化する」という言葉と等価なのだ。
そしてさらに、「言ったことが現実化する」という言葉は「一〇〇%の言ったことが一〇〇%の確率で現実化する」という言葉と等価なのだ。
だから、言ってしまったら、どんなことでも、一〇〇%の確率で、現実化するのである。
例外はないのである。
けど、文頭に述べたようなことは、さすがに、言霊主義者でも言わない。どうしてかというと、「あらわれない」ことがわかっているからだ。「でてこない」ことがあきらかだからだ。
本人が、「でてこない」と思っていることに関しては「でてくる」とは言わないのである。
でてこない……「あきらかな理由」がわかること……こういうことに関しては、「でてくる」とは、言霊主義者だって言わない。
もし、言霊主義者が言った場合、言霊理論は、正しくないということが、言霊主義者にも、わかってしまうからだ。「言霊理論が正しくない」という現実にはふれたくないのだ。
言ったにもかかわらず「その通りにならない」という現実は見たくないのだ。なので、言わない。
これは、言霊主義者が、言ってもそうならないと考えているから、言わないだけだ。
言霊主義者も、じつは、「一〇〇%の言ったことが一〇〇%の確率で現実化する」という理論は正しくないと感じているのだ。