きちがい兄貴の感覚というのが、ほかの人にはわからないから、ぼくが誤解をうけるんだよ。どれだけ、誤解がつみかさなるか? どれだけ、誤解だらけの人生だったか? そして、きちがい親父も、きちがい兄貴とおなじなんだよ。だから、もっと、誤解をうける。これ、ほんとうに、頭がおかしい人と、いっしょにすんだ人じゃないとわからない。だいたい、頭がおかしい人といっしょにすんだわけではない人は、きちがいが鳴らす騒音で、毎日毎日、何年間も、十数年間も、こまり続けるということがない。それなら、そういう毎日だ。俺の毎日は、ちがう。どれだけのハンディになるか? それを……。それを無視して、わかったようなことを言うな! わかったようなことを言うな!!
こいつら、下の立場のやつには、わかったようなことを言うように、しむけられている。こいつらは、たまたま、きちがい家族にやられなかったら、普通の生活ができただけなのに、えらそうに言いやがって。社会人のほとんどが、きちがい家族に、やられなかったやつなのである。普通に勉強することができたやつなのである。普通に毎日、眠ることができたやつなのである。毎日毎日、自分がこの世で、一番嫌いな音を、爆音で、何時間も何時間も、どれだなにを言っても、きかされ続ける生活を、しなかったやつらだ。基準がちがう。「つらい」と言っても、基準がちがう。「朝、つらい」と言っても基準がちがう。「夜、眠れない」と言っても、基準がちがう。理由がちがう。普通のやつらは、「夜、眠れない」と言っても、きちがい家族によって、もたらされた理由で眠れないわけではないから、自分で処理できるんだよ。毎日毎日ずっと、十数年間も続くということがないんだよ。毎日毎日、十数年間も、寝不足が続けば、だるい体になる。つかれやすくなる。ところが、そういうことを経験しなかったやつが「元気だ元気だと言えば元気になる」と言い、「健康管理が出ないのは健康管理ができないやつが悪い」と言う。