ほんとうに、言霊が成り立つなら、言霊主義者は、他人に説得なんてしない。言えば、それが、かならず、現実化するのだから、別の方法を考える。言っても、現実化しない場合があるということを知っているので、他人に説得をする。その説得のなかで「言霊的な」説得をするのである。
たとえば、AさんとBさんがいるとする。
Aさんは、工場の経営者で、Bさんは、Aさんの工場の従業員だ。
そして、Aさんが、Bさんに「一日に二五個、まるまるをつくれ」と言ったとする。Bさんはそれに対して「一日に二五個、まるまるをつくるのはむりです。一日につくれるまるまるは二〇個が限界です。それをこえるとまちがいがおおくなるので、できません」と言ったとする。
それにたいして、Aさんが「できないというからできる。できると言えばできる」と言ったとする。Aさんは、Bさんに一日に二五個のまるまるをつくらせたいので、そういうことを言うわけだ。
しかし、考えてみれば、言霊が成り立つなら、Aさんは、Bさんにそんなことを言わなくてもすむのだ。
Aさんがひとりで「Bさんが一日に二五個、まるまるをつくるようになる」と言えばいい。Bさんに言う必要はない。言霊理論では、超自然的な力(ちから)によって、物理法則をこえて、言霊の力が物理的な存在に作用するということになっている。
なので、Aさんが、Bさんのいないところで、 「Bさんが一日に二五個、まるまるをつくるようになる」と言えば!Bさんは、一日に二五個のまるまるをつくるようになるのである。なると言ったらなるのだ。どれだけ、Bさんがつくりたくないと思っても、Aさんの言霊によって、Bさんが一日に二五個のまるまるをつくるようになってしまう。
言霊というのは、すごい力(ちから)をもっているので、言っただけで、世界のすべてをかえることができるのだ。他人の行動ぐらい、いくらでもかえられる。かえられないというのであれば、言霊は成り立っていないということだ。