「言えば、現実をかえられる」と思っている人にとっては、「言わずに、現実にたえる」ということは、ばかげたことだ。言えば解決できるのだから、どうして、言わないのだ? どうして、言おうとしないのだ」ということになる。 「言えば、現実をかえられる」と思っている言霊主義者にとっては、言えば解決できる問題で悩んでいる人は、おろかものだ。あるいは、『「言う」という努力をしないということはけしからん』ということになる。「せっかく、言えば現実をかえられるということを教えてあげているのに、そうしないのはけしからん」ということになる。そりゃそうだろ。 「言えば、現実をかえられる」と思っている言霊主義者にとってはそういうことになる。 「言えば、現実をかえられる」と思っている言霊主義者は、言って問題を解決しようとしない他者を、根底のところでばかにしている。
さらに問題なのは、「できないと言うから、できないんだ。できると言えばできる」というような発言だ。こういう発言をする人は、言霊主義者だ。「できない」と言うから、できないのではなくて、「できない」から「できない」と(相手にわかるように)報告しているのだ。言霊主義者はたいていの場合、原因について、誤解をしている。「言わないから、できない」「できると言えば、できる」ということばにあらわされているように、つねに、原因は「言わないこと」あるいは「言ったこと」にあると(言霊主義者は)思っている。けど、そうなんですかね? 物理法則に従って、できないことがある。あるいは、物理法則に従って発生していることを(その人の力では)とめられないことがある。