一階のトイレに行って、しばしのあいだ滞在しただけなのに、腕をダニに刺された。で、蚊取り線香をたこうと、台所に行ったら、台所で、顔を刺された。ものすごく、落ち込む。これ、きちがい親父が残した負の遺産を、どうすることもできないな。これ、ほんとうに、あれだけ、家中にダニが発生してしまうと、だめなんだよな。近くにアパートを借りて、俺の大事な部分をうつして、いくらでも、ダニバルサンをやれる状態にして、晴れた日に、ダニバルサンをたくということを、定期的に何回か繰り返せば、どうにかなるかもしれない。顔を刺されると、落ち込む。このあいだバルサンの効きがあまかったのは、風呂場のドアをあけていたことと、曇りで湿気が多かったことが原因だと思う。しかし、ほんとうに、ほかの人が理解できないことを、きちがい的な意地でやって、なんともないつもりでいるんだよな。影響があるじゃないか。親父が死んでも、親父が残していった、ネズミの糞とダニが影響を与えている。これで、親父の部屋にある粗大ごみをもっていってもらったとしても、親父の部屋には無数のネズミの糞がころがっているのだ。そして、それを、片づけるのは俺なのだ。これは、くるしい。もう、何十回もやってきたけど、ダニに刺されながら、ネズミの糞を片づけるのは、くるしい。だいたい、ダニは見えないので……見えないダニに刺されているので、……たぶん、空気中に浮遊しているダニに刺されているので、どこで刺されたかわからないんだよな。これが、きつい。
普通の家族と一緒に暮らしていた人が、普通の家族と一緒に暮らしていたときにつちかった常識で、俺の状況について、いろいろと言うんだよ。そりゃ、表面的なことしか見てないからさ……。あーー。
それから、わっ勝てない人の助言でだけど、本当に腹が立つ。腹が立つ。パンもケーキもないのに、「パンがなければケーキを食べればいい」と言われたときの、いらだちはない。けど、マリーアントワネットは、絶対的少数派。民衆のほうが数が多い。絶対的な多数派。なので、ぼくの場合とはちがうんだよね。ぼくの場合は、ぼく以外の人類と、ぼくひとりのたたかいになっている。常識をめぐるたたかいさ。