経営者が労働者から巻き上げたお金で、寄付行為をするのはよいことなのかわるいことなのかという問題がある。たとえば、ある世界的な企業の経営者が、10兆円稼いだとする。まあ、10兆円稼ぐまでに30年間かかったとする。10兆円のうち、7兆円は、本来は、労働者に還元されるべきお金だったとする。つまり、労働者に賃金として払うはずのお金を、払わずに7兆円自分のものにしたとする。そして、1兆円の寄付をしたとする。その場合、寄付をするという善行をしたのだから、労働者に本来払う金を、払わなかったという悪行がゆるされるのかどうかという問題だ。額で言えば、ゆるされないのではないか。まあ、これ、本来払われるべき金額というのがわからない。だから、架空の架空の話になってしまう。
経営者が労働者側から見れば「すごい額の寄付」をしたとしても、それは、免罪符にはならないのではないかということだ。さきの話に関して言えば、経営者は、30年間にわたって、7兆円分、労働者にこそ、金をあげるべきだった。労働者からうばって?宗教団体や慈善事業団体にお金あげるというのは、そういうことを考えれば、よくない行為だ。しかし、「慈善事業団体にお金を寄付した」となると、寄付ができない労働者や、寄付をしたとしても額で負ける労働者は、「よくない行為だ」と大きな声で言えない心理状態になる。ようするに、実際に多額の寄付をするということは、多くの人を黙らせる効果がある。