じつは、防塵メガネをかけて、ネズミシートを片づける作業をしたのだけど、汗をかくんだよね。で、どうも、防塵メガネのすこしうえのあたりを、ダニに刺された。ようするに、まゆげのうえなんだけど、かゆかった。で、なんか、作業中じゃなくて二階にあがってきてから、かゆくなった。なんか、横になっているときに、かいたんだね。なんか、かさぶたができた。一度傷ができて、かさぶたになった。で、顔だからいやなわけ。腕とかじゃなくて、顔だとほんとうにへこむんだよ。俺はほんとうにきれいな肌をしていたのに、ネズミ騒動で、ほくろみたいになったり、シミみたいになったりしている。これがいやなんだよね。親父がネズミダニを導入して、肌まできたくなっている。親父、責任、とれ。まったくわかってないんだろうな。ネズミの糞は、どれだけ言っても、がん無視だからな。あれ、見えたって見えない状態になってた。気にならないのだよな。普通、絶対に気にすることを、きちがい親父が気にしないから、ひどい目にあったということが、ネズミだけじゃないのだ。ほんとうに、普通の人の感覚からずれているんだよね。すべてが……。親父が普通の人だったら絶対にしょうじないような、トラブルがしょうじている。しょうじた。いつもそうなんだよね。
兄貴も、普通の人じゃないんだよな。親父とおなじで感覚器を書き換えることができる。認めてしまったら、自分がゆずらなければならないことにつながることは、絶対にどんなことがあったって認めない。聞こえたって、聞こえない。でかい音で聞こえたって、小さい音で聞こえると思ってしまう。そうしたら、どれだけなにを言っても、そういう「感覚」が正常な感覚にもどらないので、ずっと、頑固に迷惑行為をし続けるということになるのだ。親父のネズミに関しては、二段階ある。長くなるからはぶく。
ともかく、普通の人だったらあれだけネズミの糞が、居間とか台所に落ちていたら、気になるはずなんだけど、気にしない。親父の部屋にある押し入れと親父の畳ベッドのあいだに、ものすごい量のネズミの糞がおちていた。
ダニに刺されながら、処理をするのは俺なんだよ。
使い捨てレインコートと、パンツになっている使い捨てレインコートを着て、いちおう、ダニに刺されないようにしたのだけど、作業中刺された。これは、作業中だ。その、ベッドと押し入れのあいだにあるネズミの糞だけど、三センチ、つもっている。面積としては、横?九〇センチ×縦二〇センチぐらいのスペースなんだけど、その上に、ネズミの糞が、三センチぐらい積もっている。インスタントコーヒーの瓶に入っている、粒上のインスタントコーヒーをぶちまけた状態になっていた。四本分ぐらいぶちまけた状態だ。
台所にあるスポンジたわしも、まったく気にしないで使っているんだよね。あれだけネズミが出ているのだから、そして、ネズミの糞がたくさん落ちているのだから、普通だったら、シンクのところに置いたままになっているスポンジたわしなんて、使う気にならないだろ。フタがついていて、スポンジたわしだけ、ネズミの糞がつかないとか、ネズミがうえを通らないということにはなってないわけだから。
たぶん、ネズミが出始めてから、親父が入院するまでずっと、おなじスポンジたわしを使っていた。普通なら、スポンジたわしだけ、きれいに保てるように、ふたつきの箱に入れようとか、思うはずだ。というか、普通なら、あんなに、ネズミが出ている状態に耐えられない。まあ、ふたつきの箱に関しては湿気の問題があるんだけど、ネズミの問題のほうがでかい。親父は急性胆嚢炎だったんだけど、ネズミのばい菌が影響していると思う。