どうやっても、ヘビメタ騒音でだめだ。
どれだけがんばっても、ヘビメタ騒音でだめだ。
これ、決まっているんだよな。きちがい兄貴が一日目にやめてくれなかったら、もう、それで決まっている。そして、他人は絶対にそれがわからない。他人にしてみれば、たいした障害じゃないのである。ヘビメタ騒音の「つみかさなり」がわからない。そりゃ、経験してないのだから、わからない。わからないまま、助言をする。下に見る。
自分だって実際に、自分の身におなじことが生じたら「わかる」のに、おなじことが生じてないから、わからない。
日曜日の午後五時五五分。いまも、鳴ってた。この時間も鳴ってた。どれだけ言っても、一秒もやめてくれなかった。朝からひたすら続く。夜までずっと続く。きちがい兄貴が眠るまでずっと続く。この絶望がわかるか?
こっちにだっていろいろな用事があるんだよ。やらなきゃならないことがあるんだよ。それが全部こわれる。ヘビメタ騒音に汚染されてしまう。俺が、引きこもりで問題なのは、じつは、そこだ。そこ以外のことじゃないのである。けど、他人は、わからない。そういうふうに、ヘビメタが鳴っていた十数年間毎日を経験してない。ようするに、こういうことが「つもって」体の調子が悪いとか、この世の雰囲気がヘビメタ騒音の雰囲気だということとか、ヘビメタ騒音でやる気や意欲が破壊されたこととか、睡眠回路がものすごく深いところまで破壊されたというとかが重要なのだ。決まった時間に起きることができないので、通勤ができないとか、通学ができないとか、約束の日時にどこかの集合場所に行くことができないということとかが、表面的には問題になる。けど、ほんとうに問題なのは、体の調子が悪いとか、この世の雰囲気がヘビメタ騒音の雰囲気だということとか、ヘビメタ騒音でやる気や意欲が破壊されたこととか、睡眠回路がものすごく深いところまで破壊されたというとかだ。こっちのほうが、重要なのである。で、他人は、実際にはヘビメタ騒音がないのだから……僕が経験したような長期間の騒音を経験しなかったのだから、わからない。それは、「現在」のエイリには、影響与えてないものだと思ってしまうのである。だから、「過去は関係がない」と気楽に言ってしまう。けど、それは、まちがっている。関係がある。いまの身体に関係がある。きちがいヘビメタ騒音が、十数年にわたって鳴っていたということが、いまの体に影響を与えている。成長期を丸ごと飲み込む期間、ヘビメタ騒音が、鳴っていたということが、現在の「脳みそを含んだ体」に影響を与えている。脳は、過去のきちがいヘビメタ騒音の影響を受けている。どうして、それがわからないのか?