本当に、生まれながらの差がある。
しかし、生まれながらの差を無視して「そのとき」こういう状態なら、その人は、そういう状態を自分で選択したと言ってしまう人たちがいる。こういう人たちは、自分がどれだけ有利な状態で生まれてきたか、無視してしまう。
本当は、環境がよかったからそんなことを言えるのだが、自分の意志的な努力で、そういう状態を勝ち得たのだと根底で思っている。
だから、他者がそうでなかったのであれば、それは、他者が意志的な努力をしなかったからだと思ってしまう。「不幸な状態は、本人が選んでいる」と言う。「やりたくない仕事をやるような状態は本人が選んでいる」と言う。
瞬間的な状態について、あるいはその時間の状態について、あるいは、その日の状態について、まず、生まれながらの差を無視して、考えるのである。だから、いま、不幸な状態で暮らしている人は、不幸な状態を選んだと言ってしまう。自分で不幸になることを決めたので、不幸になっていると、中立的な立場から言う。
しかし、生まれながらの差を無視していることにはかわりがない。
(つづく)