「過去なんて関係がない」と言うやつは、みんな、学歴や職歴を重視している。学歴や職歴……学歴や職歴の集大成である現在の肩書を重視してものを言うやつばかりだ。これ、自分で自覚がないのかな? 『専門家の意見は信頼ができる』と信じているやつも、学歴や職歴を重視している。
けど、そういうやつに限って、『過去なんて関係がない』と言い出す。たぶん、この人たちは、無職や中年アルバイトは『なめてもいい』と考えているのだろう。学歴や職歴の集大成である、現在の肩書を重視しているからこそ、『こいつは、なめてもいい』『こいつには、説教をしてもいい』と考えるのだろう。
『過去なんて関係がない』という話がどこにつながるかというと、『就職しろ』『ちゃんと働け』という話につながるのである。もちろん、学歴や職歴がボロボロである人たちは、学歴や職歴が立派であればアクセスできる職場にはアクセスできない。「職場」と書いたけど、「職業」でも「仕事」でもいい。
ようするに、『きつくて、くるしくて、賃金が極端に安い仕事をしろ』ということなのである。
逆算すれば、『きつくて、くるしくて、賃金が極端に安い仕事をしろ』と言いたいがために、『過去なんて関係がない』と言い出すのである。
『現実を見て、アクセスできる仕事に就けばいい』ということも言うだろう。これも、『きつくて、くるしくて、賃金が極端に安い仕事をしろ』ということなのである。『現実を見て』というのは、『現在の現実』を見てということだから、『過去なんて関係がない』という意味で過去を軽視しているように見える。
しかし、現実を見るということは、高望みはせずに『きつくて、くるしくて、賃金が極端に安い仕事をしろ』ということなのだから、過去を重視していると言える。この場合の現実を見るというのは、学歴や職歴がボロボロだという現実を認めろということなのである。さらに、学歴や職歴がボロボロなら、底辺ブラック企業にしか就職できないという現実を認めろということなのである。
ぜんぜん、過去を軽視してない。過去の履歴を特別に重視している。
『高望みはせずに』というのも『おまえだって、自分の学歴や職歴がボロボロなのはわかっているだろ』ということだ。そういう意味で『現実を見ろ』と言っている。だから、もちろん、過去の履歴を重視している。
「過去なんて関係がない」「現実を見て、アクセスできる仕事に就けばいい」と続けて言った人は、過去を無視しているような印象を(言われたほうに)あたえるが、ほんとうは、過去を重視している。「過去なんて関係がない」「現実を見て、アクセスできる仕事に就けばいい」というのは、過去を重視しているからこそ言える、発言だ。
問題なのは、「過去なんて関係がない」「現実を見て、アクセスできる仕事に就けばいい」と続けて言うような人が、ほんとうは、自分は過去を重視しているということに気がついてないことだ。ほんとうは、ダブルスタンダードなのにまったく気がついてない。