「言えば、言ったことが、(言霊の力によって)現実化する」と思っているのに、「人間は働くべきだ」と思っているのである。
そして、「特権階級の人は、労働をしなくてもいい」と思っているのである。「特権階級ではない人は、労働をするべきだ」と思っているのである。
特権階級ではない人が、労働をしないのはけしからん」と思っているのである。
特権階級ではない人が、労働をしないのはけしからんと思っているのであれば、言霊の力を使って、労働させればよいのである。
言霊の力を使うのは、簡単だ。言えばいいのである。「これ以降、特権階級ではない人は、すべての人が労働をするようになる」と言えば、言っただけで、言霊の力によって、「特権階級ではない、すべての人」が労働をするようになる。
言っただけで、自分が思った通りの社会をつくることができるのだ。
話をすすめるために、一時的に、「特権階級」云々のことは、どうでもいいとする。
ともかく、言霊理論が正しいなら、「これ以降、すべての人が労働をするようになる」と言いさえすれば、赤ちゃんも、重病人も労働をするようになる。
自分が……「他人が働かないことに不満をもっている場合」……は、言うことで解決できるのだ。「これ以降、自分以外のすべての人が、働くようになる」と言ってしまえば、言霊の力によって、自分以外のすべての人が、働くようになる。
例外はない。
赤ちゃんだって、働く。病人だって働く。
「自分以外のすべての人が、働くようになる」と言ってしまったのだからそうなる。
ところが、そんなことは、できないので、「働かないやつは、けしからん」と「愚痴」を言うようになるのである。
* * *
ブラック社長は、言霊主義者だ。言霊主義者なら、説得する必要がないのである。たとえば、名前だけ店長が「もう、これ以上、サービス残業はしません」と(ブラック社長に)言ったとする。
そうしたら、ブラック社長は「できるできると言って頑張ればいい」と名前だけ店長を説得することになる。
説得して、サービス残業をさせようとする。
しかし、言霊理論が正しいのなら、「名前だけ店長は、これからもずっと、サービス残業をする」と、どこかで、言ってしまえば、それで、 「名前だけ店長は、これからもずっと、サービス残業をする」ことになるのである。
名前だけ店長の意志を無視して、言霊の力によって、名前だけ店長は、サービス残業をすることになるのである。
言霊理論が正しいなら、そうなるのである。
間違っているから……言霊理論が間違っているから、ブラック社長は……言霊理論が背後にある……「できるできると言って頑張ればいい」ということを、名前だけ店長に言うことになるのである。
言霊理論が前提であることを言って、名前だけ店長を働かせようとするのである。
ほんとうに、言霊理論が正しいのであれば、「名前だけ店長は、これからもずっと、サービス残業をする」とトイレのなかで言ったって、「名前だけ店長は、これからもずっと、サービス残業をする」ことになるのである。
別に、名前だけ店長に言わなくても、ブラック社長がトイレのなかで「名前だけ店長は、これからもずっと、サービス残業をする」と言いさえすれば、名前だけ店長がどう思っているかは、関係なく、言霊の力が作用して、名前だけ店長は、サービス残業をすることになるのである。
言霊理論が正しいなら、そうなる。
なので、言霊理論が背後にある言葉を言って、相手を説得する必要などはないのである。言霊理論が正しいなら、相手を説得する必要なんてない。
ところが、言霊主義者は、言霊の力を使って、相手の行動をかえようとせず、相手を説得することによって、相手の行動をかえようとするのである。相手がいないところで、ひとりで……自分が……「相手はこうなる」と言ったって無駄だと考えているということを意味している。
これは、言霊主義者が、じつは、言霊理論を信じていないということを意味している。こういうところでも、「ぬけぬけ」なのである。
最初から「ぬけぬけ」なのである。