きちがい兄貴のしくみが、きちがい親父のしくみとおなじなんだよなぁ。
だから、きちがい兄貴も、自分がやっていることには、気がつかない。
どれだけ言われたって、「やってない」ときと、態度がおなじなのである。
きちがい兄貴だって、自分が、親父の猛烈な態度にやられて、適切なハンダゴテを学校にもっていけなかったときの、くやしさは、わかるのに、自分(きちがい兄貴)が、俺に、おなじ思いをさせているということが、どれだけ言われても、まったくわからないんだよな。
いま、午後五時二五分で、午後五時二五分も鳴っていた。もうすでに、一時間三〇分ぐらい鳴っている状態だ。そして、俺が午後四時に家に到着したとする。
そうすると、一時間二五分ずっと鳴っているわけ。一時間二五分、昨日も、一昨日も、一〇〇日前も、ずっとやられていた音が鳴っているわけだよ。
これが、どれだけ悔しいか。どれだけ、体にこたえるか。一〇〇日前と書いたけど、ずっと五〇〇〇日以上積もってしまう。そのあいだ、家では勉強ができないし、学校でも、寝不足なにの気をつかって張り詰めている状態だったり、寝不足でポーっとしている状態で、あんまり、勉強ができる状態ではなかった。
ちなみに、……やってしまうと、マイナスの勉強になって、頭がこんがらがって……家で勉強しなければ解けた問題も解けなくなってしまう……。
学校でおぼえたことも、家で、復習すると、ヘビメタで吹き飛んでしまう。
教科書に書いてあることや、参考書に書いてあることが、「ヘビメタつき」の状態になってしまう。ヘビメタに汚染されたいやなものになってしまう。これが、いろいろな影響を与える。
これも、俺にとってヘビメタという音楽ジャンルがどういうものかということを理解していないやつにはわからないことだ。
遅刻をした理由を問われたので、「ヘビメタ騒音で眠れなかった」ということをこたえたときがある。
そのとき、ヘビメタが好きなやつが「なにが、ヘビメタ騒音だぁ」と吐き捨てるように言ったのだ。
おなじヘビメタ好きでも、きちがい兄貴の友達はまともで、「こんな音で鳴らしていたら、弟さんがかわいそうだ」「家族の人がかわいそうだ」と言って俺に気をつかってくれたのだ。
きちがい兄貴は、自分の友達の発言でも、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と俺との間にあったことを、考えれば、到底言えないことを、言ったのだ。
ともかく、ヘビメタが好きな人にも、いろいろな人がいる。
* * *
ちなみに、ぼくが宿題を忘れたことについて、「宿題を忘れるなんて、バカだ」と言った人がいた。宿題を忘れたのではなくて、宿題をすることができなかったのだ。
きちがいヘビメタ騒音で、どうしても、宿題ができないのだ。別に忘れたわけじゃない。宿題をしあげて、学校にもっていくということが、ヘビメタ騒音で、できなかっただけだ。
「宿題なんてやろうと思えば、できるのに、なんで忘れるんだよ」というようなことを、「宿題を忘れるなんて、バカだ」と言うまえに、そいつが言ったわけ。
だから、「兄貴のヘビメタ騒音で宿題ができない」と言ったのだ。そのときは、その人が、ヘビメタが好きだということを、ぼくは知らなかった。そいつがヘビメタが好きなやつで、普段、家で聴いているということは……その時点では、ぼくは、知らなかった。あとで、知ったわけ。
遅刻にしろ、宿題にしろ、理由を問われることがあるんだよ。
でっ、ヘビメタ騒音のことをしかたな言うと、あんまりいい反応が返ってこないんだよね。ヘビメタが好きな人も、ヘビメタのことを知らない人も、ヘビメタのことは知っているけど、特に本人が聴いているわけではない人も、いるわけ。
でっ、その人が、ヘビメタのことを好きだということを、ぼくが事前に知らない場合がある。で、正直に言ってしまうと、ヘビメタを好きな人は、「なんだこいつ」と思うことがあるみたいなんだよな。
ともかく、ヘビメタ騒音の影響が「遅刻」や「宿題未提出」というかたちになって、あらわれるわけ。それ以外にも「注意不足」とか「興奮のしやすさ(ストレスがたまっているのでおこりやすい)」というかたちになって、あらわれるけ。
でっ、「遅刻」や「宿題未提出」に関しては、理由を問われることがある。
しかたがないので、正直にヘビメタ騒音で、眠れなかったとか、ヘビメタ騒音で宿題をすることができなかった」ということを言うわけ。
けど、普通の人は、『そんなのは、お兄さんに言えば、解決する問題だ』と思うわけ。そして、騒音に関しても、『そんなにひどい音でずっと鳴っているわけではないだろう』と思ってしまうわけ。
ほんとうに、ずっと、ものすごい音で鳴っているから、ほんとうに勉強ができないのだ。宿題もできない。
ところが、世間的には、「家族のヘビメタ騒音で宿題ができないということはない」ということになっているわけ。
「家族なんだから、しずかにしてくれと言えば、静かにしてくれるはずだ」と自動的に思ってしまうわけ。普通の人には、きちがい兄貴の(家出の態度)がわからない。普通の人には、きちがい兄貴の「このくらいの音で鳴らしていいはずだ」という感覚がわからない。
きちがい兄貴は、本人も気がついていないところがあるのだけど、猛烈にでかい音で鳴らして、普通の音で鳴らしていると思っているところがある。
けど、ここに書いたように、きちがい兄貴の側に、精神的な問題がある。ちがい兄貴の側に、認知の問題がある。ちがい兄貴の側に、無意識的な問題がある。
兄貴にしたって、自分が聞きたくはない音……特にきらいな音ではない音を……あの音のでかさで聞かされたら、一〇秒で、頭にくるんだよ。
けど、きちがい兄貴は、ヘビメタを思いっきり鳴らしたいという、無意識的な欲求があるので、自分が思いっきり鳴らしたい音に関しては、どれだけでかい音で鳴らしても、しずかに鳴らしている(普通の音で鳴らしている)と思ってしまうという倒錯的な心理的な問題がある。
けど、きちがい兄貴自身も、わかっていないし、なおさら、きちがい兄貴のヘビメタ騒音にさらされたことがないほかの人も、わかっていないわけ。
きちがい兄貴無意識に問題があるということは、きちがい兄貴もヨソの人も、ぜんぜんわかっていないわけ。きちがい兄貴が、「普通の音で鳴らしていると思って(でかい音で)鳴らす」ということを意識的に、お芝居として、やっているなら、まだ、問題が小さかったわけ。
たぶん、そういう場合は、(自分が本当はでかい音で鳴らしていると言うことを)知っているのだから、どれだけ頑張っても、三日ぐらいで、ヘビメタ騒音問題が終了したと思う。
普通の家なら、三日で、解決する問題なんだよ。そして、ほかの家族も、実際にでかい音で鳴っているわけだからしずかにさせることに積極的に協力してくれたはずだ。
ところが、兄貴は、芝居でやっているわけではなくて、ほんとうに気がつかないわけだし、家族は、積極的に協力してくれたわけじゃない。
だから、こういうことが、よその人には、不自然にうつるのだ。
だから、人によっては、ぼくが嘘を言っていると思うわけ。
この、「エイリが嘘を言っている」と思ったやつらの態度が、ひどいんだよ。